さて、間が空いてしまいましたが、プレイヤースキルの続きを書きます。
このコラムは、コラム「己を磨け! −プレイヤースキル−」の続きとなっています。
前回のコラムを読んでいない方は、先にそちらをお読みください。
■よりTRPGを楽しむためのプレイヤースキル
これから紹介するプレイヤースキルは、持っていればよりTRPGを楽しむことができるでしょう。
もちろん、持っていないからといってTRPGが楽しめないわけでもありませんし、これから紹介するプレイヤースキルを全て持つのは結構大変なことです。ですから、自分で好きなものを選んで徐々に習得していくとよいでしょう。
なお、ここではプレイヤースキルの一つ一つについて詳しく説明はしません。長くなりすぎますので。
要望があれば(なくても私が書きたくなれば)個別にコラムとして書く予定です。
▼システムの深い理解
プレイするシステムのルールブックを読み込む、TRPG関連の記事・Web・友人等から情報を得て、ルールや世界設定、データ等を理解し覚える事です。
世界設定への深い理解はシナリオ作成やプレイの幅を広げ、キャラクターの設定に深みを持たせることもできます。ルールやデータを理解し覚える事は、効率的にキャラクターを作成したり、有効な戦術を立てたりするのには必要不可欠です。
また、システムの理解を深めることによって、「システムが推奨する遊び方」が見えてきます。
システムには必ず「方向性」というものがあります。「方向性」というのは、「システムが何を重視して作られているか」を指しています。
例えば、「ルールやデータが非常に多く、戦略を駆使したギリギリの戦闘ができる」ことであったり、「カッコいいキャラクターを演じるための世界やルールが揃っている」ことであったりします。
システムの「方向性」は意外と大事です。「方向性」に合わないシナリオをうまくプレイするのは非常に難しいものとなるでしょう。シナリオの「方向性」に合わせてシステムを選択したほうがうまくいくことが多いです。
もちろん、たまに「方向性」の全く違うシナリオをやってみるのも非常に面白いです。ただし、。その場合はシステムの「方向性」を見極めて、それをうまく絡めるようなシナリオを作るか、そのシナリオ限りのルール(一部のデータを禁止・修正したり、本来規定されていないルールを規定するなど)を作ってシステムの「方向性」をシナリオに近づける必要があります。
システムへの理解を深めることによって、注意しなければならないこともあります。
それは、システムへの理解を深めるあまり、セッション中の矛盾やミスが目立って見えてくるということです。そしてそのシステムの知識があるだけに、その間違いを正したいという誘惑に駆られることです。
このシナリオの舞台となっている町は公式の設定と違う、GMの適用したルールは厳密に言うと間違っている、あのモンスターがこんな行動を取るとは考えられない、あのPCの設定は世界観に合っていない…など気にしだすと止まりません。
しかし、ここでやってはいけないのは、そのミスや矛盾を指摘するだけならまだしも、セッションを停滞させる議論にまで発展させてしまうことです。誰もがそのシステムに精通しているわけではありませんから、本人は気づかずにミスをしている場合がほとんどです。
「公式ではこうだからそれはおかしい」といって譲らないと、最悪セッションが成り立たなくなることもありますし、しつこく指摘されれば指摘されたほうは間違いなく不機嫌になるでしょう。
設定のミスくらいなら、「今回はこの設定でいく」としてしまえばほとんど問題はないはずです。ルールのミスは、次から気をつければよいでしょう。
間違っても、そのミスを長々と指摘したり、あまつさえ自分の知識をひけらかして自慢するような行為は行わないようにしましょう。
▼効率化
普通、TRPGにおいて「資源」は限られています。
「資源」とは、「PCやPLが持っていて、有効に利用できる可能性のあるもの」全てを指します。
具体的には、以下のようなものを指します(もちろん、システムによって異なります)。
PCの資源
・PCを作成するときに消費するポイント
・PCの所持品・所持金
・PCのHPやMP
・PCの特技などのデータ
・PCが現在置かれている状況で使えそうな物
PLの資源
・PLが持つ知識
・現在まで手に入れたセッションに関する情報
・状況から判断した予想と選択肢
・PLが判定を行える回数
これらの「資源」を有効活用し、最小の「資源」で出来うる限り最良の「結果」を出すことが「効率化」と言えます。例えば、非常に強力なPCを作成する、最小限の被害で敵を倒すことなどです。効率がよければよいほど、PCやPLは有利になります(そもそも有利になるように効率を上げるのですから当然といえば当然ですが)。
「効率化」の術を身に着けるには、上記の考え方(つまりどうすれば有利になるか)を念頭において、あらゆるデータや状況を「比較」していくことが基本となります。例えば、同じ効果でもこっちのほうがコストが少ないだとか、ここで攻撃するよりも防御をしたほうが結果的に被害は少ないだとかそういった考え方です。
このとき、複数の資源を組み合わせて考える必要もでてくるので、かなりややこしいことになります。詳しい説明は非常に長くなるのでここでは省きます。
この効率というものは、突き詰めれば突き詰めるだけ上がっていきます。しかし、効率ばかり追い求めると弊害もあります。
それは、キャラクターの個性がほぼ固定されてしまうことです。
効率を上げることは、言ってしまえば最適解を求める行為です。ですから、キャラクターの強さを追い求めて効率ばかりを考えると大抵似たような能力値、スキル、装備になります。キャラクターの行動も、効率的な行動ばかりを取ると似たような行動ばかりになります。
「常道」といえば聞こえはいいのですが、どんなキャラクターでも同じ装備、同じ行動ではわざわざ違うキャラクターをプレイする意味も薄れてくると思います。
そういう意味では、キャラクターの選択肢を狭めてしまうという弊害があります。
また、効率化の追求は自分だけ弊害があるだけではなく、他のPLにも弊害が及ぶことがあります。
PTの中に突出して圧倒的な強さを持ったPCがいる場合、セッションでは次のような悲劇(?)が起こる可能性が非常に高くなります。
・圧倒的に強いPCに敵のボスはなす術もなく、盛り上がらない戦闘になる。
・圧倒的に強いPCに敵の強さを合わせた結果、他のPCは全く歯が立たずに全滅か見てるだけ。
このように、戦闘のバランスが非常に取りづらくなってしまうのです。
こういう状況になると、他のPCは戦闘の参加を諦めるか、圧倒的に強いPCに負けないくらいに効率化を図るかしかなくなってしまいます。
しかし、戦闘は時間的にも楽しさ的にもセッションでは大きなウェイトを占めることがほとんどで、参加を諦めるのは非常に勿体無いし、暇になってしまいます。
かといって、戦闘に参加しようとするとキャラクターの効率化を余儀なくすることとなり、毎回似たような装備やスキルの組み合わせになるなど、キャラクターの自由度が狭まってしまう可能性が高いのです。
このような悲劇(?)が起きないように、効率化もほどほどにするのがよいでしょう。
丁度よい効率化の基準はありません。あなたがプレイしている環境とシステム次第です。
GMとPL全員が効率化の術を知っていて、ギリギリのスリルを味わうような遊び方をするならば、競って効率化を図っても非常に楽しいセッションとなるでしょう。ストーリーに重点を置くならば、効率化よりもキャラクターの表現のために資源を費やした方がよいでしょう。
大きな弊害もありますが、「効率化」のプレイヤースキルを持っていることで大きな恩恵を得ることもできます。
それは、所々に効率化を取り入れることによって、「余裕」が生まれることです。
先ほど「強すぎる」キャラクターが問題だとしましたが、その逆に「弱すぎる」キャラクターもまた問題となります。しかし、キャラクター表現に重点を置くとそちらに資源を使ってしまうためどうしてもキャラクターの「強さ」に使える資源は少なくなってしまいます。
そこで、キャラクターの表現に差し支えない部分や程度で「効率的な」資源の使い方をすれば、最低限必要な強さを手に入れることができ、効率化によって浮いた資源を他のものに回すことが出来ます。
「効率化」は「自分の表現したいものを自由に作る」ために非常に有用なスキルとなるのです。
▼アドリブ
いわゆる「即興」です。予定外の台詞の掛け合いや、想定外の事態に対してその場で対応することです。
TRPGでは、このアドリブは非常に多くの場面で必要になります。そもそも、シナリオに大まかな筋書きとNPCの台詞くらいは書いてあっても、PCの台詞まで書いてあることはありませんから、PCの台詞は全てアドリブであるとも言えますし、シナリオの筋書きとは違う方向へ話が進んだ場合、そこから先はシナリオには書いてませんからPCの行動は全てアドリブになると言えます。
アドリブができるようになると、咄嗟にうまい台詞を言ったり、全く予想外の出来事に出くわしてもまるで想定済みだったかのように振舞うことができます。
アドリブを身に着けるには、とにかくTRPGを遊んで慣れるのが一番です。
また、そもそも「想定外」の事態に出くわす確率を減らすために、日頃から様々な状況と対応に小説や映画、漫画等で触れておくことも有効です。セッション中に印象的なシーンを覚えておき、「もしさっきと違う行動を取ったらどうなるか」を想像してみるのもいいトレーニングになると思います。
▼交渉能力
相手と折り合いをつけ、利益を得る(もしくは損害を最小限に止める)方法です。
物事を解決する際、毎回暴力に訴えるのはただの野蛮人に他なりません。事によっては警察機関に捕まったり、返り討ちにあってしまいます。かといって、目の前で起こっている事態を指をくわえてただ見ているだけというのもおもしろくありません。
そこで、物事を有利に進めるために交渉が用いられます。
システムによっては、予め「交渉」系スキルの判定によって交渉の成否を決定するものもありますが、毎回それで処理してしまうのも味気ないですし、せっかくの「テーブルトーク」RPGなのですから会話によって物事を進めて行きたいものです。
交渉術に関しては、様々な技法が存在します。交渉術に関しての詳細はここでは書きません、というより私自身きちんと勉強したわけではないので書けません。Webで調べたり、本を読んで勉強してみるのもよいでしょう。
交渉というのは、基本的に「自分と相手の両方に利益をもたらす」結果に導く必要があります。「お互いの譲歩点をすり合わせる」ために話し合うことが交渉の基本です。「一方的な要求をする」「相手の話を全く聞かず自分の意見だけを押し通す」ことは交渉とは言えません。最低限このことを頭に留めておくと、交渉のロールプレイも様になってくるでしょう。
交渉術は、会話によって進行されていくTRPGにおいて非常に強力な武器となります。その分、悪用すると非常に凶悪です。
参加しているGMやPLが全員交渉術に精通しているとは限りません。交渉術に長けたPLが、GMや他のPLを丸め込んで自分にだけ有利な状況に持っていこうとしてしまうと、みんなが楽しめる方向から遠ざかって行ってしまうことが非常に多くなります(もっとも、他の人に不平不満を感じさせるようでは真に交渉が上手いとは言えないのかもしれませんが)。
交渉術に長けているPLが交渉が苦手なGMやPLに対して交渉すると、彼らの操るNPCやPCが消極的になってしまうこともあります。相手のもっともらしい言葉に反論が浮かばないなどの理由で言葉に詰まってしまうのです。
ですので、交渉術は用法・用量を守って正しく使いましょう。
■プレイヤースキルは楽しむために
TRPGでよく使われるプレイヤースキルを挙げてみましたが、これらを習得するには勉強や経験が必要です。
そのため、TRPGを遊んでいる人全てがこれらを持っているわけではありません。そして、これらを持っていない人に対しての配慮を忘れてしまうと、これらのプレイヤースキルは「不快感を与えるイヤなモノ」へと容易に変化します。
プレイヤースキルはTRPGをより楽しくするものです。そのためには、悪用はもちろんのこと他の人への配慮を忘れてはいけません。
一番大切なのは、楽しもうとする心です。プレイヤースキルに溺れない様にしましょう。