■何事においても
TRPGに限りませんが、「雰囲気を読む」ということは大事です。
場の雰囲気を読めない人は、場の雰囲気を乱し、その場にいる人を少なからず不快にさせてしまいます。
この問題の難しい部分は、「雰囲気を読む」という行為は抽象的な部分が多くて理解しづらいのと、その場その場で雰囲気は変化するため、なかなか読みきれない部分が多いところです。
そのため、誰でも場にそぐわない行動をしてしまうときはあります。
今回のコラムでは、この「雰囲気を読む」ことについてTRPGに限定して考察していきます。
注意:今回のコラムは厳しい事が書いてあるかもしれませんが、この文章はあくまでTRPGをより「楽しく」遊ぶために書いています。筆者に悪意及び害意はないということを先に明言させていただきます。
■全ては大いなる意思のもとに
TRPGで卓を囲む際、その場には自分も含めて複数の参加者がいます。
この「複数の参加者」の、「総合的な意思」が「場の雰囲気」と呼べるものでしょう。
さて「場の雰囲気」を読むためには、まずこいつがどういうものなのかを知る必要があります。
まずは「場の雰囲気」を構成している要素に分解してみましょう。
あまり細かくてもわかりにくいので、大まかに3つの要素に分けました。
▼参加者全員の共通認識 「あ、そのネタ知ってる〜」
参加者全員が知っている共通の知識のことです。
少なくとも、参加者のうち過半数が知っているか興味を引かれる話題で話をする必要があります。
自分にとって知識がないことを話されてもわかりませんし、しかも自分にとってそれが興味をまったく引かないのであればその話を聞いている分だけ時間の無駄となってしまいます。
ヲタクの戯言しかり(!)、学校の授業しかり(!?)、自分の興味を引かない話は聞いてて苦痛にすらなりますよね。
参加者のうち、ある程度の人が話に乗ってくれるか、興味を持って聞いてくれるかしてくれないと、その場は「白けた」雰囲気になってしまい、「場を乱し」ます。
ちなみに、話に乗ってくれる人が一人だけだと、熱く語り合う二人をよそに周りの雰囲気がどんどん冷めていきますので注意しましょう。
▼参加者全員の許容範囲 「まぁ、それもアリだよね」
参加者全員が許容できる範囲のことです。
下限は「まぁ、あんま好きでもないけどそれもアリだよね」といったところでしょうか。
許容する対象は、セッションで起こりうる全てといってもいいでしょう。
プレイヤーの発言、キャラクターの強さ、シナリオの傾向、表現方法など非常に多岐にわたります。
一般的には、過度の演出や台詞、強すぎる・弱すぎるキャラクター、PCが介在する意味のないシナリオ、性的・差別的な表現が嫌われるところでしょうか。
この中でも特に表現に多いのですが、「嫌い」のレベルにも色々あります。
「嫌いだけど特に騒ぐほどではない」という軽いものから、「生理的に受け付けない」とか「信念として許せない」などの「拒否」レベルまで様々です。性的暴力・差別発言・宗教的思想・残虐行為などが該当するでしょう。
許容範囲については、参加者のうち誰か一人でも「拒否」まで行ってしまうようなレベルに達するような行為を行うと非常に場の雰囲気が悪くなってしまいます。
人の価値観、受け入れられないものは人それぞれですから、そういった部分には触れないように気をつけねばなりません。決して「了見が狭い」とか非難しないように。あなたにも受け入れられないものはあるでしょう?
ちなみに、「なんとなく嫌い」という理由だけで「譲歩の余地もなく」拒絶するのはいい行動ではありません。
TRPGは多人数でプレイしている以上、それは我侭でしかなくセッションの進行を停滞させるだけです。
みんながみんな「なんとなく嫌い」と不満を漏らすだけではちっとも話は進まずゲームになりません。
▼参加者のやる気 「みwなwぎwっwてwきwたwwww」
いわゆる「セッションに参加する意思と態度」です。
セッションに積極的に参加し、楽しもうとする姿勢は場の雰囲気を良くし、セッションをより楽しいものとしてくれます。
逆に、セッションに参加しない、楽しもうとしない姿勢は場の雰囲気をどんどん悪くし、セッション自体をつまらなくします。
GMがセッションに参加しないことは滅多にないと思いますが、PLが参加しないことはしばしばありえます。
具体的な例として、GMや他のPLの提案に対して具体的な返答をしない、周りに不満を撒き散らす、セッションとは関係ない行為に集中する、寝るなどです。
これらの行為はセッション中一人でも行うと、参加者全員に悪影響がありますので極力行わないようにしましょう。
■大いなる意思にうまく乗ろう
さて、「場の雰囲気」は上に挙げた3つの要素が主な成分です。
この3つの成分について、どう対処したらよいかを考えてみましょう。
原則として、「参加者全員が許容できる行為を行っている」限り、場の雰囲気を読めていることになります。
■参加者全員の共通認識
参加者全員が知っている、もしくは興味を引く話題を出す必要があります。
少なくとも、参加者の大半が知らない・興味がない話題を振ってしまわないようにしなければなりません。
では、どうやってそのラインを見極めればいいのでしょう。
▼まずは相手を知ろう 「これ知ってます?」
まずは、参加者全員の知識や興味のカテゴリを探る必要があります。
これは、会話の中から読み取る必要があります。
参加者がどんな知識を持っていて、どんなことに興味があるのかを、その人の話している内容から推測します。
自分から「○○って知ってます?」など軽い質問をして、その返答を参考にするのもよいでしょう。
また、そのときは質問した人だけでなく、他の参加者の様子も伺うとベストです。
何か言いたそうな目で見ていたらおそらくはその話題を知っているか興味があるのでしょう。
特に気にしていなければ、知識も興味もないと見たほうがいいでしょう。
なお、探りの会話であまりコアな話はしないようにしましょう。
時間がかかってしまいますし、他の参加者が会話についていけないとやっぱり場の雰囲気が悪くなりかねません。
一般的に多くの人が知っているであろう知識を使うのも手です。
ただし老若男女みんな知っているくらいメジャーな知識でないと知らない人も意外といるので注意がいります。
アニメで言えば、「ドラえもん」「サザエさん」ならほとんどの人が一回は見たことがあるでしょうから、ある程度の知識と興味は保証されます。
もしくは、これからプレイするTRPGのシステムについてでもよいでしょう。
ただし、システムの話題についてはやはり深い部分にはあまり突っ込まないように。特に世界観とルール談義は場が荒れることも多いので気をつけましょう。
▼話題を振られたら 「ああ、それね。僕としては〜・・・」
参加者から何か話題を振られたときはどうすればいいでしょう。
もし、その話題を知っていれば、「その話題を知っている」ということと、「どのくらいまで知っている」ということがわかるように返答しましょう。そして、あまり長くならないように適当なところで会話を止めます。特定の人とだけあまり長く会話をするのは時間を取ってしまいますし、ひょっとすると他の人の迷惑にもなりかねません。会話は満遍なく回しましょう。
もし、知らない話題であれば、「残念だけどその話題は知らない、ごめんね」ということをやんわり伝えましょう。
あからさまな拒絶や無視はそれだけで雰囲気がぎくしゃくしてしまいます。
■参加者全員の許容範囲
人のこだわり、許容範囲は人それぞれの形をしています。
意外な部分がタブーだったりと難しいものです。
▼まずは基本
まず心がけることは、「よく知らない相手が参加しているときはきちんと言葉を選ぶ」ことと、「自分の許容している基準よりも他の人の基準は厳しいと心がける」ことです。
▼言葉選び
基本的に丁寧語で話していればそれほど問題はありません。同じ意味でも、そのときの口調や言葉によって印象は変わります。命令口調や乱暴な口調は相手の拒否感を強める事がありますので注意しましょう。
▼許容範囲を見つけよう
「他の人の判断基準」ですが、初対面あるいはそう何度も会ったことのない人の判断基準は当然のことながらよくわかりません。そこでよく知らない相手に対しては、まず許容範囲は狭いものとして話をしていくとよいでしょう。話をしていくうちにその基準はどんどん広がって(あるいは狭まって!?)いき、「相手の許容範囲」が見えてくるでしょう。
このとき、作っておくと便利なのは「自分が考える一般人の許容範囲」です。自分の許容範囲は別として、「一般の人が持っているであろう許容範囲」のモデルを自分の中で持っておき、よく知らない相手に対してはその「一般人の許容範囲」を適用して話をします。後は話の内容を元に「一般人の許容範囲」から「相手の許容範囲」にカスタマイズしていくのです。
また、よく知らない相手に対して最低限気をつけるべきことは、社会的に悪とされていることの話題には詳しく触れないことです。
TRPGのセッションには悪役がいる場合がほとんどで、あの手この手を尽くしてPC達を妨害します。
中には非常に残虐な手段や、現代社会では許されないような行為にも及びます。
作り話とはいえ、そういうことを詳細に描写すると嫌悪感を感じてしまう人もいるでしょう。
そういう参加者がいる場合は、そのプレイヤーに合わせて表現を変えたり、詳細までは描写しないなどの手段を用いましょう。その話題に乗って参加者が話を膨らませたり、詳細な描写を付け加えることは避けるべきでしょう。
▼場の許容範囲を掴む
これもやはり会話やセッション中の反応で探るほかないと思います。
許容された部分から少しずつ掘り下げていき、許容の限界を探ることもできますが、ほどほどにしておいたほうがいいでしょう。
サークル等で何度も集まる機会があれば、徐々に許容範囲も見えてくると思います。
コンベンション等の一回きりの集まりでは、あまり許容範囲が広いものとは考えないようにしておきましょう。
■参加者のやる気
「やる気」は物事を肯定的に見やすくし、物事を進める原動力となります。
TRPGはGMだけで話を進めるものではなくPLも話を進めていく必要があり、GM、PL双方の「やる気」というものは非常に重要になってきます。
ですが、この「やる気」というものは結構厄介なもので、ちょっとした事で急激に萎えてしまう事があります。
そして、「やる気」のないプレイは周りのPLやGMのやる気も削ぐ可能性が非常に高く、セッションの面白さを削ぐことも少なくありません。
特にGMは、セッションを管理・運営する立場にあるためPLの態度には非常に敏感になっています。
PLがやる気なさそうに参加していると自分のセッション運営に不安を感じ、モチベーションが下がっていきます。
たとえ自分に「やる気」があったとしても、周りにそう見えなければやる気がないと思われてしまいます。
では、どういう行為が「やる気がない」と思われるのでしょうか。
▼意思のわからない返答をする
GMやPLのアプローチに対して、「へー」とか「ふーん」や「あっそー」といった突き放したような返答してしまうと、アプローチに対して返答を放棄したものと見られてしまいます。
相手は次に行う行動やアプローチに対する反応を期待しているので、アプローチに対しての返答はきちんと行うべきです。
単に相槌だけ打っていると、聞き流されていると感じられますし、積極的にセッションに参加する意思が見られません。
アプローチに対しては、自分の意見を含めた返答をしましょう。
もし、情報が足りずに何をすればよいのかわからないときや、判断に困っているなら素直にその事をGMやPLに伝えましょう。
▼セッション以外のことに集中する、セッションに参加しなくなる
セッション中にセッション以外の事に集中するのは非常によくありません。
話が途中でわからなくなり、いざ自分のPCが登場する場面になると今までの状況が飲み込めずにあたふたするなど弊害しか起こりません。
また、他の参加者にも非常に悪い印象を与えるでしょう。
よく見られる行動は、セッション中に小説や漫画等の本を読みふける、絵を描く、長時間席を外す、セッション外の人や場面に登場していないPLと関係のないおしゃべりをする、他のゲームに参加する、寝る等です。
これらの中で、絵を描く、ちょっとしたおしゃべり程度ならば、集中しすぎなければそれほど問題はないでしょう。すぐにセッションに復帰できるようにセッション中の進行にも常に気を配っておけば大丈夫です。
ただし、おしゃべりに関してはセッションに対して騒音となりますので、ほどほどにしましょう。
小説や漫画を読みふける、他のゲームに参加する、寝るなどは問題行動と見てよいでしょう。
それらの事をしたければ、最初からセッションへの参加は諦めることです。
眠気に関しては、どうしても耐えられなければ15分ほど休憩をもらって仮眠を取るのも手です。
15分程度の仮眠は眠気を飛ばします(医学的に証明されてます)。
ただし30分以上寝ると本格的に寝てしまうので注意です。
▼ネガティブな発言
セッション中に他人のミスを批判したり、不平不満を漏らすのはよくありません。
セッション中にミスがあった場合は指摘するに留め、次に同じミスをしないように促す程度にしておきましょう。
ミスについて言いたいことがあれば、セッションが終わった後にしましょう。少なくとも、セッション中に議論を行うのは避けましょう。万が一こじれた場合、最悪セッションが崩壊することもあるからです。
不満は、漏らす前にまずは自分に原因がないか考えましょう。
また、自分の要望が全て通るわけではないということも非常に大事なことです。
逆に、全て跳ね除けられるべきでもないということも。
シナリオで出番がない、他のPCがひいきされているなどと感じることもあるかもしれませんが、GMも神ではありませんから、出番や活躍が均等にならないことだってあります。特に、最近のシナリオ傾向(とても老人くさい言い回しですが)では主役のPCが決められていることも多いので、活躍が均等にあるとは限らないことも覚えておきましょう。
出番が少なければ、自分の出番は自分で作るくらいの勢いで積極的にプレイするのもよいですし、脇役として渋い活躍をするのもよいでしょう(この辺は前のコラムで書いてます)。
GMから与えられるのを待つだけで与えられないことに不満を漏らすだけでは駄目だ、ということですね。
それでも、やはり不平を感じるというならばセッション終了後にそれとなく切り出しましょう。
GMや他のPLが気づかずにやってしまっていることも考えられます。お互いに率直な意見を交わしましょう。
これも、セッション中にやるのは避けましょう。少なくともセッションの流れが途切れますし、こじれるとセッション崩壊につながります。また、シナリオによっては、後半に活躍が集中するため、前半では他のPCに焦点を当てることもありますので、セッション途中では不公平さが見極められないという点もあります。
■場の雰囲気を良くする
これまでは場の雰囲気を読み、雰囲気を壊さないためにはどうするかを書きました。
では、さらに発展して、「場の雰囲気を良くする」ためにはどうしたらよいか考えましょう。
▼とにもかくにも、参加する意思とやる気
すでに何度も書いていますが、セッションに参加する意思とやる気を持ち、それを前面に押し出して行きましょう。PLが積極的にセッションに参加することは、GMのモチベーションをアップさせることにつながります。
セッションを運営するGMのモチベーションは、セッションの雰囲気に大きく作用します。
「GMのセッションに楽しんで参加しているよ」という態度を見せれば、場の雰囲気はよくなるでしょう。
セッション中の姿勢も重要です。大抵のセッションはテーブルを囲んで遊ぶと思いますが、お互いの顔が見えるように座るのは重要です。できればテーブルの中央に向かって姿勢を正すとよいでしょう。
明後日の方向を向いているとセッションに参加する意思があまりよく見られません。人ってのは集中してる方向に顔が向くもんです。
また、床に座ってセッションを行う時はねっころがってしまいがちですが、これもあまり行儀はよくありません。
ねっころがると、だらけた雰囲気が醸し出されてしまいやる気がちょっと減退してしまうかもしれません。
長時間座っていると腰やお尻が痛くなりますから座りっぱなしもよくないですが、ねっころがるのは避けましょう。
(私はいまだにやってしまいます。反省せねば)
▼ポジティブな発言
セッション中によいプレイングやロールプレイ等があった場合は、積極的に褒めたり、感想を述べましょう。
自分のアクションに対して、周りから肯定的な意見が来るとやる気も出ます。
ただし、無理に褒めたり、お世辞にならないように注意しましょう。褒め殺しや皮肉はネガティブな発言と取られます。
▼「お約束」を使いこなす
いわゆる「お約束」によって場を盛り上げる方法です。
「こういう場面では、こうするのがセオリー」という行動を取ることで、「やっぱりこうでなくっちゃ」という気分にさせ、場を盛り上げることができます。
いわゆる「王道」ってヤツですね。
「王道」というパターンは、大多数の人に受け入れられやすいため安心して使うことができます(それゆえ、「王道」と呼ばれるわけですが)。「王道」に沿っていれば、まず「場の雰囲気」を壊すことはなく、安定して場を盛り上げることができます。
欠点はマンネリ気味になることですが、さほど問題ではありません。
「王道」は小説や映画、漫画等ストーリーがあるものなら大抵転がってますから、そこから読み取ってストックしておくとよいでしょう。
▼時にはコミカルに
シリアス一辺倒なセッションもそれはそれでいいのですが、時にはコミカルな描写も挟むとより引き立ちます。
ハードボイルドな探偵が時々ひょうきんな、あるいはすっとぼけた行動をしたり、非常にお堅い騎士が子供にからかわれて大人気ない行動を取ったりと、普段見せないような一面を描写するとキャラクターに深みがでますし、シナリオ全体としてもメリハリがつきます。
また、笑いは場の雰囲気を明るくします。
■結局は、「みんなで楽しもうとする」こと
参加者全員で「楽しむ」ことを目的として行動するように心がければ、場の雰囲気は自ずとよくなります。
自分が楽しむだけでなく、周りに気を配り、他の人の楽しみを邪魔せず、より楽しくなるように相互で楽しませれば、きっと終わったときに「楽しかった」と思えるセッションができるでしょう。